ロボット手術について
近年、医療の技術革新によりロボット手術が急速に普及しています。ロボット手術とは、術者が手術用ロボットを操作し精密な手術を行う方法です。当院でも、この最先端技術を活用し患者さんに負担の少ない低侵襲手術を提供しています。
ロボット手術の特徴
1.精度の高い操作
ロボット手術では、術者が専用のコンソールからロボットアームを操作します。これにより、人間の手では難しい微細な動きや正確な切開が可能となります。特に、腫瘍の切除や精密な縫合が求められる手術において、その精度が発揮されます。
2.患者さんへの負担軽減
従来の開腹手術に比べロボット手術は小さな切開口から行われるため、からだへの侵襲が大幅に軽減されます。これにより、手術後の回復が早く、入院期間の短縮や痛みの軽減も期待できます。また、出血量が少なく輸血の必要性が減ることがあります。
3.拡大視効果
ロボット手術では、高解像度の3Dカメラを使用し、通常の手術よりも広い視野で精細な画像を確認しながら手術を行います。これにより、複雑な解剖構造をより正確に把握でき、安全性が向上します。
患者さんへのメリット
ロボット手術を選択することで、以下のようなメリットが期待できます。
- 1.精緻な手術操作による高い根治性と機能温存
- 2.からだの負担が少なく早期に社会復帰が可能
- 3.おなかの傷が小さく目立ちにくい
最先端技術とチーム医療の融合
当院にはロボット手術認定プロクター、ロボット外科学会専門医、ロボット手術(da Vinci)certificate取得医、内視鏡外科学会技術認定医、腹腔鏡技術認定医が在籍しております。ロボット手術は、技術革新により医療の未来を切り開くものです。
しかし、それを実現するのは医師とテクノロジーだけではありません。私たちの強みは、看護師、臨床工学士と地域医療連携員など多職種連携による技術と人間の力が融合したシームレスなチーム医療です。このワンチームの力で、多摩地域の患者さんに質の高いロボット手術を提供し続けていく所存です。
当院におけるロボット手術
以下の診療科でロボット手術を導入し、多くの患者さんに効果的な治療を提供しています。
患者さん、地域の先生方におかれまして当院のロボット手術に関するご質問や詳細な情報については、以下の担当医までお問い合わせください。
TEL:042-665-5611(代表)
診療科 | 担当医氏名 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 |
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消化器外科・移植外科 | 河地 茂行(統括) | × | ○ | × | ○ | × |
石崎 哲央(大腸) | × | × | ○ | × | ○ | |
田渕 悟(胃) | ○ | × | ○ | × | × | |
泌尿器科 | 橋本 剛 | ○ | × | × | × | ○ |
消化器外科・移植外科
ロボット手術対象疾患と特色等について
当科では、2024年6月より手術支援ロボット「ダヴィンチ」を導入し、同月より胃がん、7月より直腸がんの患者さんに対して手術を行い良好な結果を得ております。以降、胃、大腸における症例数を順調に増加させております。今後は肝臓・膵臓領域、食道がんに対しても開始していく予定です。
以下では、各消化器領域におけるロボット手術の利点と取り組みについて簡潔にご紹介いたします。
対象疾患
胃がん | 大腸がん(結腸・直腸) |
胃がんに対するロボット手術
胃がん手術では、膵臓に近いリンパ節を含む部分の切除が必要です。ロボット手術は、高精度なアームの動きで膵臓や周辺臓器へのダメージを最小限に抑えつつ、合併症を軽減します。特に膵液漏などのリスクが低減され、術後の回復も早まります。また、体腔内での吻合操作もアームの多関節機能により安全で確実な操作が可能になります。
大腸がん(結腸・直腸)に対するロボット手術
結腸がんの手術では、3Dカメラによる立体的な視野が正確な解剖認識を可能にし、ロボットの手振れ補正機能が複雑な血管の解剖に対して優れたパフォーマンスを発揮します。これにより、病巣の完全切除とリンパ節郭清が行われます。また、自由度の高いロボット鉗子を使うことで、病巣の切除、リンパ節郭清、吻合再建などのすべての手術工程を体内で完結させ、低侵襲手術を実現します。
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精緻なリンパ節郭清が可能
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腸管同士を体腔内で吻合する
直腸がん手術では、深部骨盤においてロボット鉗子の関節機能による質の高い剥離操作で永久人工肛門回避に努めます。また安定した術野は正確な切離ラインのトレースを可能とし、最新の電気ジェネレーターとの組み合わせにより神経のダメージを最小限に抑え、病巣切除と排尿・性機能温存の両立を可能とします。
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神経温存かつ病巣を完全切除
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深部骨盤底での精緻な操作
今後実施予定の手術
肝胆膵領域に対するロボット手術
肝臓や膵臓の手術では、繊細な血管や胆管の周囲での高精度な操作が重要です。ロボット手術の精密な動作により、出血や胆汁漏れなどのリスクを抑え、患者さんの安全性を向上させています。
食道がんに対するロボット手術
食道がんの手術では、反回神経などの繊細な神経を保護しつつ、リンパ節の郭清を行う必要があります。ロボット手術は三次元の高解像度画像と多関節アームを活用することで、微細な操作が可能となり、神経損傷や合併症のリスクを軽減します。
当科では、これらの技術により、患者さんにより優れた治療成果を提供し、早期回復をサポートしています。
泌尿器科
ロボット手術対象疾患と特色等について
対象疾患
前立腺がん | 膀胱がん | 腎臓がん |
腎盂尿管がん | 副腎腫瘍 |
ロボット手術は従来の腹腔鏡手術では実現できなかった3D視野および鉗子の多関節により繊細で正確な動作が可能となりました。これにより従来よりも短時間で手術が完遂可能となり合併症や術後の感染症などのリスクが軽減されました。
前立腺がんに対するロボット手術
前立腺がん手術の際、失禁予防や勃起障害に対する機能温存手術の質が高まり術後満足度の向上へとつながっています。手術時は機能温存を目的として前立腺周囲組織の神経血管束が温存されます。当院では可能な限り神経血管束の温存を心がけております。
一方、治癒率を上げるため周囲組織を温存出来ない症例もあります。その場合は拡大リンパ節郭清を正確に行い癌の再発予防に努めております。手術のみでは根治できない場合は術後放射線やアンドロゲン遮断療法など追加治療を積極的に行い予後の改善に努めます。
また、放射線を含め他の治療の再発症例に関しても手術による治療が効果的と判断した場合は積極的に手術加療を行います。
腎がんに対するロボット手術
小径の腎がんに対してはロボット支援下腎部分切除が標準治療となっております。通常は4㎝以下の腎がんに対して行われます。4㎝以下でも条件によっては腎部分切除が不可能な症例もある一方、7㎝までは腎部分切除が可能な症例もあります。まずはCTなどの画像を確認して患者さんと相談しながら術式を決定しています。また、局所進行性腎がんでは術前に薬物治療を行い腫瘍を縮小させてから腎臓を摘除することも可能です。この場合は2-6か月薬物治療を行いその反応を確認して手術可能か判断します。
膀胱がんに対するロボット手術
浸潤性膀胱がんに対しては膀胱全摘除術が標準術式となっています。膀胱を摘除したのちは尿路変更という尿路の再構築が必要となります。現在は体腔外での尿路変更が中心ですが2025年からは回腸導管に関しては体腔内での作成を開始する予定となっております。また自然排尿型の尿路変更(新膀胱)に関しても積極的に行っています。
その他
東京医科大学では日本でいち早く手術支援ロボット「ダヴィンチ」手術を取り入れ、前立腺がんの多くの症例を積み重ねてきました。術式の適応拡大に伴い2024年末までに前立腺がんに対する前立腺摘除術、腎臓がんに対する腎部分切除術、根治的腎摘除術、膀胱がんに対する膀胱全摘除術、腎尿管癌に対する腎尿管全摘除術を行ってきました。特に前立腺全摘術については先進医療の時代からのこれまでの手術件数は3,000件を超えています。東京医科大学八王子医療センターに「ダヴィンチ」が導入されるにあたり大学病院で研鑽を積んだチームが合流し八王子でも泌尿器科がんに対するロボット手術が標準治療として可能になりました。これまでの経験と知見を活かし、安全かつ正確な手術を八王子においても行い、地域医療に貢献していきます。