デジタルデータと画像診断
筆者: 放射線科 科長 朴 辰浩
世の中、スマホやSNSが全盛である。写真や画像はデジタル化され、拡散され続けている。文書も音楽もメデイアを介さずネット経由のデータ遣り取りが当たりまえ、決済も交通もスマホさえあれば事足りる時代である。
一方、何でも容易に手に入るが故に、ウイルス感染や情報漏洩といった新たな問題が生じ、セキュリテイ対策やネットワーク管理など、便利さと引き換えに対応が迫られるようになった。
放射線科で扱う画像も今やほぼすべてがデジタル化されている。特にCT、MRIは近年高速化、高精細化が顕著で、毎日大量の画像が発生し、サーバーに蓄積されている。データ量の増加はCTで著しく、1症例で1000スライスを超えることも少なくない。15年前には普通に行われていたフィルムとシャウカステンを用いた報告書作成など不可能となった。
八王子医療センターがフィルムレス化されたのは1年半前。フィルムの捜索や運搬、保管をする必要はなくなった。画像配信システム(PACS)に加え、電子カルテも整備され、画像診断はすべて高精細モニターを装備したパソコンと報告書作成ソフトを用いて行うようになっている。
今後も画像データ量の増加は必至であり、人の力のみで処理するのは限界を迎えつつある。このような状況下、放射線診断の世界でも人工知能(AI)の研究が活発化している。大量の画像データをAIが診断支援する時代、放射線科医の役割も様変わりすることと思う。