とるぞ 息切れ! 治るぞ COPD!
筆者: 呼吸器内科 呼吸器内科 寺本 信嗣
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、2020年に、世界の死因第3位になる大変な病気だ。一番の原因は、タバコで、今吸っている人はもちろん、かつて吸っていた人も危ない。40歳以上で20年以上たばこを吸っていたら、まずCOPDである。肺が壊れて、肺の力が衰える、この病気は、息切れがおこる。しかし、多くの場合、年のせいだと気づかれない。そして、息切れをごまかすために動かなくなり、筋肉がおちて、サルコペニア(※注)、食欲不振になる。うつの大きな原因にもなり、こころの健康も悪化する。進行すると酸素が必要になる。COPD大使も務めた、元笑点の司会、歌丸師匠の息遣いこそ、まさにCOPDのそれである。「地上にいるのにおぼれているように苦しい」は、晩年の師匠のお言葉だ。
しかし、朗報がある。とても良い治療薬が使えるようになっている。LAMA/LABA配合薬という吸入薬だ。一度吸えば、10年前の肺の力を取り戻せる。私の外来の多くの患者さんも、息が大きく吸える、階段も登れるようになったと好評だ。酸素が必要になるまえに、なるべく早く治療を始めて、肺の老化を抑えたい。
そして、COPD予防のためにも、禁煙が大切だ。自分の健康を守るのももちろんだが、吸った煙は、だいぶ時間がたっても、喫煙者の吐く息に確認される。つまり、喫煙者が、息をはくとその周囲は、汚い空気になって、それを吸いこんだ人に二次被害が及ぶ。特に、お子さんは危険だ。タバコ吸いのおじいちゃんは、孫のためを思えば、抱っこしてはいけないのだ。
当院は、禁煙外来も行なっており、高い成功率を収めている。こちらも薬の進歩で、お薬で、タバコが嫌いなれる優れた方法がある。少しでも禁煙に興味があれば、ぜひ、挑戦してほしい。
COPD治療も進歩した。「とるぞ息切れ! 治るぞCOPD!」 である。
※注「サルコペニア」とは、「加齢に伴って生じる骨格筋量と骨格筋力の低下」のことです。