ご挨拶

診療科長
尾田 高志
腎疾患は血尿・蛋白尿など尿所見異常のみの段階から末期腎不全まで、急性の経過を辿るものから30年以上にわたる慢性の経過を辿るものまで、幅広い病状・様々なステージを経て進行します。このように多様な病状を呈し、その診断・治療に専門性の高い技術を要する腎疾患に対して、患者さんを中心に考え、それぞれの段階に応じた最適な医療を、効率的、専門的、かつ総合的に提供するために、当施設では内科と外科の垣根を取り払い、腎臓病センターを2017年4月1日に設立しました。腎臓病センターでは、腎臓病の診断・治療に関して実施されている全ての処置を一部門内で提供可能です。
このような中、腎臓内科では、特に蛋白尿や血尿など軽度の尿所見異常のみの初期段階で腎臓病を正確に診断し、それぞれの患者さんに最も適した治療を開始することで、腎機能障害の進行を停止・遅らせることに力を注いでいます。また、末期腎不全の患者さんに対しては、腎代替療法として血液透析や腹膜透析はもちろんのこと、腎移植への導入、内科的なフォローにもセンターの外科部門と緊密に連携して取り組んでいます。
当科のモットーは、バランスのとれた安全・安心な高水準の腎臓病診療を提供し地域医療に貢献することにあります。
対象となる疾患
当科では内科的腎疾患の全て、すなわちIgA腎症を代表とする各種糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、間質性腎炎、血管炎・膠原病・糖尿病・高血圧・動脈硬化・痛風・感染症など全身性疾患に伴う腎疾患、多発性嚢胞腎・ファブリー病・アルポート症候群などの遺伝性腎疾患、急性・慢性腎不全、さらには慢性腎臓病と呼ばれる種々の原因により腎機能障害や尿所見異常が慢性的に続く病態など、多岐にわたる疾患を対象にしています。代表的な疾患としてIgA腎症の治療と、最近新しい治療法が導入された多発性嚢胞腎の治療に関して下に追記します。
当科は血液浄化療法室の管理も担当しており、実施している代表的な血液浄化療法も下に追記します。
1. IgA腎症の治療
慢性糸球体腎炎のなかで最も多い疾患であり、腎生検により確定診断します。
病因として何らかの病巣感染、特に扁桃における慢性感染の関与が示唆されており、この意味で扁桃摘出術+ステロイドパルス療法(扁桃+パルス療法)が根治的な治療法としてわが国では普及しつつあります。
当科でも耳鼻咽喉科の協力のもとで積極的に実施を進めています。
扁桃+パルス療法は有効性の高い治療法ではありますが、尿所見異常が改善しない患者さんも一定数いらっしゃいます。
そのような患者さんの慢性炎症のフォーカスとして扁桃以外に上咽頭炎も注目されており上咽頭炎塩化亜鉛塗布療法(Bスポット療法)の専門の外来(腎と病巣感染の外来)を開設し実施しています。
2. 常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の治療
ADPKDは両側の腎臓に嚢胞が多発し、加齢とともに増大、慢性に末期腎不全へと進行する、最も多い遺伝性腎疾患です。
未だ根本的な治療法はありませんが、最近、トルバプタンという内服薬が嚢胞の増大を抑制し、疾患の進行抑制に有効であることが確認され、臨床応用されるようになりました。
当科でも2泊3日の入院コースにより治療の導入に対応しています。ただし、本治療が適応となるのは、嚢胞が両側腎に認める全ての患者さんではなく、一定の基準がありますので当科に受診して適応をご確認いただく必要があります。
3. 腎代替療法、血液浄化療法室での各種血液浄化療法
末期腎不全に対する腎代替療法として、当科では患者さんの病状・社会的背景などを勘案し、一般的な血液透析療法以外に腹膜透析療法も積極的に導入しています。
また、外科部門と緊密に連携して、腎移植導入への橋渡しや、移植後の患者さんの内科的なケアなどに介入しています。
血液浄化療法室では、慢性の末期腎不全患者に対する血液透析療法に加え、急性腎障害患者に対するCHDFなどの急性血液浄化療法、血漿交換・エンドトキシン吸着・顆粒球除去などの各種アフェレシス療法、さらに難治性腹水患者に対する腹水濾過濃縮再静注法(CART)など広範な治療法に対応しています。
外来受診方法
初診
初診外来は原則予約制とさせて頂いております。予約は当院の予約カウンター内線3192~5へご連絡頂き、来院日に紹介状をご持参下さい。
再診
月~金曜日、第1、3、5土曜日、外来診療担当日、時間予約制にて診療しております。
専門外来・特殊外来・教室
CAPDの外来
月、木曜日午後に診療しております。※原則予約制
腎と病巣感染の外来
水曜日午後に診療しております。※予約制
腎臓病教室
当院では腎臓病の進行予防・進行した際の治療について腎臓病教室を開催しております。
年3回開催し、医師・看護師・薬剤師・医療福祉士・理学療法士など多職種からの説明があり、休憩時間に患者さんの個々の相談にも応じています。
院内の講堂で行い、申し込みは不要ですので、どなたでもご気軽にご参加下さい。
詳細は腎臓内科 吉川憲子医師(内線7468)もしくは、栄養管理科(内線4156)までお尋ね下さい。
実施している検査
腎組織生検 | 腎機能検査(蓄尿実測クレアチニンクレアランスなど) | 蓄尿による尿蛋白定量、食塩摂取量定量、蛋白摂取量定量 |
腎画像検査(エコー, CT, MRI) | 腎移植ドナー評価 |
行っている治療
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IgA腎症に対するパルス療法、上咽頭擦過療法(耳鼻科と共同で)
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ネフローゼ症候群に対するステロイド・免疫抑制療法
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ANCA関連腎炎に対するステロイド・免疫抑制療法
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ループス腎炎に対するステロイド・免疫抑制療法
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ADPKDに対するトルバプタン療法
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慢性腎臓病に対する集学的管理
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慢性腎不全に対する血液透析
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慢性腎不全に対する腎移植(外科と共同で)
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各種アフェレーシス療法
主な診療実績
年間診療実績
2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | |
---|---|---|---|---|
外来患者人数(人/年) | 13203人 | 12320人 | 12561人 | 13445人 |
外来新患数 | 770 | 834 | 963 | 704 |
入院患者数 | 421人 | 464人 | 454人 | 491 |
腎生検数 | 58件 | 57件 | 51件 | 67 |
血液透析導入数 | 78 | 96 | 81 | 119 |
腹膜透析導入数 | 12 | 9 | 7 | 5 |
外来腹膜透析患者数 | 56 | 49 | 45 | 48 |
血液浄化療法室診療内容
① 急性腎障害、敗血症に対する急性血液浄化療法
② 自己免疫疾患に対する血漿交換(DFPP含む)免疫吸着療法
③ 肝不全に対する、血漿交換療法、HDF
④ 巣状糸球体硬化症、閉塞性動脈硬化症に対するLDL吸着療法
⑤ 潰瘍性大腸炎・クローン病に対する顆粒球除去療法
⑥ 難治性腹水に対するCART
⑦ 他院で維持透析を受けておられる方の当院入院治療中の血液透析
⑧ 慢性腎臓病の血液透析導入
診療実績(人/年)
2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | ||
---|---|---|---|---|---|
入院透析患者数 | 517 | 638 | 671 | 693 | |
特殊血液浄化 | CHDF | 57 | 54 | 51 | 81 |
エンドトキシン吸着療法 | 16 | 8 | 1 | 1 | |
血液交換療法 | 11 | 11 | 8 | 7 | |
DFPP | 17 | 11 | 10 | 10 | |
免疫吸着療法 | 14 | 9 | 11 | 5 | |
LDL吸着療法 | 4 | 13 | 5 | 4 | |
顆粒球吸着療法 | 11 | 6 | 10 | 13 | |
腹水濃縮還元療法 | 13 | 20 | 29 | 40 |
医師紹介
-
教授・科長
おだ たかし
尾田 高志
担当曜日
木・金
[特に専門とする領域]
腎臓病、慢性糸球体腎炎、腎血管炎、感染関連腎炎
-
講師
やまだ むねはる
山田 宗治
担当曜日
水
[特に専門とする領域]
腎臓病、慢性糸球体腎炎、感染関連腎炎、腎線維化、血液透析
-
臨床講師
よしかわ のりこ
吉川 憲子
担当曜日
火・木
[特に専門とする領域]
腎臓病、腹膜透析、血液透析、栄養管理
-
院内講師
とみやす ともひろ
冨安 朋宏
担当曜日
月・木・土
[特に専門とする領域]
腎臓病、腹膜透析、血液透析
-
助教
こじま ただす
小島 糾
担当曜日
木・土
[特に専門とする領域]
腎臓病、急性腎障害、腹膜透析、血液透析、救急医療
-
助教
うちだ たかひろ
内田 貴大
担当曜日
月・水
[特に専門とする領域]
-
助教
いのうえ だん
井上 暖
担当曜日
火
[特に専門とする領域]
腎臓病
-
研究員
こじま あき
小島 亜希
担当曜日
土
[特に専門とする領域]
腎臓病
-
後期臨床研修医
くわた こうじ
桑田 幸治
担当曜日
[特に専門とする領域]
-
後期臨床研修医
さかい たかし
酒井 敬史
担当曜日
金
[特に専門とする領域]
-
後期臨床研修医
むかえ みつや
迎 光矢
担当曜日
[特に専門とする領域]
腎臓病
-
助教(在籍出張中)
こまつ しゅうへい
小松 秀平
担当曜日
[特に専門とする領域]
腎臓病
-
兼任教授
よしだ まさはる
吉田 雅治
担当曜日
水
[特に専門とする領域]
腎臓病、血管炎、膠原病腎、腎病理
-
兼任助教
すぎざき けんたろう
杉崎 健太郎
担当曜日
月
[特に専門とする領域]
腎臓病、腎病理、血液透析
休診・代診情報
休診日 | 休診医師 | 代診医師 |
2021年03月19日(金曜日) | 酒井 敬史 | |
2021年03月24日(水曜日) | 山田 宗治 | |
2021年03月29日(月曜日) | 冨安 朋宏 | |
2021年03月29日(月曜日) | 杉崎 健太郎 |
認定施設
•日本腎臓学会認定教育研修施設
•日本透析医学会認定教育研修施設