概要
病理診断部は、病理専門医(以下:病理医)、中津川部長のもと臨床検査技師8名が所属し、病理診断・細胞診・病理解剖などを執り行う部署です。
病理診断部で行う業務は、患者さんの主治医(以下:臨床医)が、患者さんの体から採取した検体を適切に処理し、標本を作製し、病理医・細胞検査士が標本を顕微鏡で観察することで、病名や病変の性質及び広がりなどの病理学的診断行います。病理診断は、臨床医が治療計画の立案や治療法の選択をする際の必要不可欠な役割を果たしています。近年では、病理診断の際に作成するホルマリン固定パラフィン包埋ブロック(以下:FFPE)から行われる「がん遺伝子検査」が増加し、治療薬の選択においての役割も大きくなっています。
スタッフおよび主な取得資格
臨床検査技師 | 8名 |
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細胞検査士 | 8名 |
国際細胞検査士 | 6名 |
認定病理検査技師 | 4名 |
二級病理検査士 | 6名 |
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者 | 6名 |
有機溶剤作業主任者 | 6名 |
化学物質管理責任者講習 | 5名 |
臨地実習指導者 | 2名 |
業務内容
病理組織診断では、患者さんの身体から内視鏡などで採取された様々な組織から、顕微鏡で観察可能なガラス標本を作製し、病理医が顕微鏡観察して診断します。病理診断には、内視鏡などの主に外来で行う生検組織診断、手術で摘出された臓器の組織診断、手術中の病理組織診断(術中迅速病理組織診断)、OSNA法によるリンパ節転移の判定、細胞診断、病理解剖などがあります。
細胞診断では、細胞検査士の資格をもつ臨床検査技師が細胞診標本を顕微鏡で観察し、スクリーニングを行います。
1.生検組織診断
治療方針の決定のために、胃や大腸、気管支や肺、内視鏡検査、あるいは、皮膚などの生検の際に採取した組織の一部から顕微鏡標本を作製し診断を行います。診断の際にはそれぞれの病変の診断のために必要な特殊染色や免疫組織化学染色、遺伝子検査が選定され行われます。
2.手術で摘出された臓器の組織診断
摘出された臓器は、手術室あるいは病理診断部で10%中性緩衝ホルマリンによって適切な固定処理がなされます。病変の進行具合や手術で病変部がすべて取り切れているのか、がんなどの細胞の異型の具合など、手術後の治療の方針決定に必要な情報を診断していきます。
病理診断の際の基本的な流れを下記に示します。
- 組織採取→固定(10%中性緩衝ホルマリン)
- →切り出し作業(第一段階:病変部など必要な部位を選ぶ)
- →FFPE作製(第二段階)
- →薄切(第三段階:ガラス標本作製のための薄く切る作業)
- →染色(第四段階)
- →鏡検(第五段階:病理医が診断する)→必要に応じて特殊染色・免疫染色
- →報告書作成
このような流れの中、臨床検査技師は各段階で関わりを持ち、様々な品質管理に寄与しています。
例えば、免疫染色では一次抗体の温度管理や染色性の維持管理など品質管理が重要です。当院では200種類以上の抗体が常に染色可能な状況を保ち病理診断を支えています。
3.手術中の病理組織診断(術中迅速病理組織診断)
手術中に患者さんの病変の一部や断端を切り取って標本作製を行い、病理診断を行い手術室の医師に迅速に連絡します。診断結果により術式の変更や手術範囲の決定がなされます。
下記に工程を記します。
- 病変の一部や断端が提出される
- →切り出し
- →組織を凍結用の包埋剤に埋め込み→-80℃で急速凍結
- →凍結標本を作製→染色
- →病理診断→手術室の医師に連絡
当院では、医療連携の一環として多摩地区のいくつかの病院で行われている手術中の迅速病理診断も行っています。
4.手術中の遺伝子検査・OSNA法
乳癌の手術中に腋窩リンパ節転移についてCK19メッセンジャーRNAの増幅を見ることにより診断します。
5.細胞診
患者さんから採取した喀痰や尿、体腔液に含まれる細胞や、子宮頸部擦過検体、気管支鏡下の穿刺や擦過検体などから顕微鏡標本を作製し診断を行います。細胞検査士の資格をもつ臨床検査技師と細胞診専門医・病理医が連携して診断を行っています。
細胞診の検体は様々な部位から採取されます。部位や採取方法によって標本作製等の方法が異なりますが、ここでは代表的な細胞診断の工程を下記に記します。
- スライドガラスに塗抹された標本が届く→染色
- →顕微鏡観察(スクリーニング:細胞検査士)
- →必要に応じて特殊染色
- →顕微鏡観察・診断確定(細胞診専門医・病理医)
6.病理解剖
懸命な治療にもかかわらず、不幸にして病死された患者さんに対して、ご遺族の承諾のもとに病理医がご遺体の病理解剖を行います。生前の診断は正しかったのか、病気はどのくらい進行していたのか、適切な治療がなされていたのか、治療の効果はどのくらいあったのか、最終的な死因は何かなどを診断します。病理解剖の結果の蓄積は医学の進歩への貢献が期待されます。臨床検査技師は、執刀する病理医の手助けとなる介助業務を行います。
7.その他の業務
7-1.臨地実習の受入れ
理論的な知識だけでは得られない現場での経験の獲得や実践的なスキルの習得を目的とし、臨床検査技師を目指して大学や専門学校で勉強している学生の臨地実習を受入れています。
7-2.研究支援
依頼をうけて標本作製や染色・顕微鏡写真撮影などの研究協力を行っています。